基本的に不潔な男は女の子に嫌われてしまいますブログ:20160830
1週間くらい前、小学生のむすめが、
「うちのおじいちゃんって、ふつうのおじいちゃんとなんか違うよね…」
申し訳なさそうに、小さな声でわたしに囁いた。
「ふつうの」という表現に、
わたしは吹き出しそうになりながらも、
その理由を尋ねた。
むすめは少し間をおいて答えた。
「だって、悪いことをしたら目を三角にして怒るし、
謝るまで絶対に許してくれないもん」
「ふつうのおじいちゃんたちは、そこまでマジにならないしね…」
と畳み掛けてきた。
確かにわたしのお父さんは、
大きな身体に仁王様のような鋭い眼光で、
一見他を寄せ付けない雰囲気を醸し出している。
七十歳を前にして体力が衰えてきたとはいえ、
その風格は昔となんら変わりはない。
そんなお父さんを、むすめたちもまた一線を画して見ていたのだ。
わたしは自分が子どもだった頃のお父さんを思いだした。
厳しく、寡黙なお父さんだった。
筋の通らないことをしようものなら、
容赦なく大きな平手が飛んできた。
わたしは無性に怖かった。
でも一方で、そんなお父さんを誇らしく思う自分がいた。
それは、言動の端々に
お父さんの人情深い側面を見ていたからかもしれない。
こんなことがあった。
かつて消防署員であったお父さんが
救助活動を終えて帰宅した時だった。
タバコをもみ消すしぐさに、
お父さんのいらだちがみてとれた。
しばらくして、お父さんはその理由を言葉少なに語り始めた。
洪水で溺れかけていた親子の救助に向かい、
子どもを救おうと手を差し出した時だった。
「わたしを先に助けて」と叫びながら、
お母さんが子どもを押し退けて
ボートにしがみついてきたのだという。
「残念だ」
一呼吸おいて、お父さんはひとこと言った。
いざという時にこそ、
身を挺して子どもを守るのが親ではないのか…
そんな義憤が聞こえてくるようだった。